H. P. FRANCE主催のファッション展示会 rooms EXPERIENCE 37にて、ジュエリーブランドnach(ナッシュ)とコラボしたVRコンテンツ「Le zoo nach flottant ━ 空中に浮かぶnach動物園 ━ 」を展示しました。
nachは、NadiaとNancyの姉妹が2011年にフランス・トゥールーズで立ち上げたブランド。
今回のVRコンテンツは、心を込めて丁寧に手作りされているnachのジュエリーが持つ、独特の雰囲気や世界観、温かみ、今にも動きだしそうな動物達の躍動感といった魅力を、VRショートムービーにまとめたものです。
当社はこれまで、モネや北斎などの美術・芸術作品をデジタルの世界に再構築し、アートの新たな利用・体験方法を提示してきました。
視聴者やファンがアーティストの創造する世界に没入し、自由な視点や角度で作品を「体験」することは、作品へのあたらしい気づきや解釈を生み出し、双方の関係をより深く結びつけると考えています。
今回のVR作品の制作にあたり、コンテンツの狙いや制作面での配慮など、担当者のコメントとともにお伝えします。
【コラボレーションのきっかけ】
プロデューサー 水島:今回のコラボレーションは、当社が出展していた展示会で、H.P.FRANCE様が当社ブースを訪問いただいたことがきっかけで始まりました。その中で先方が主催する、様々なクリエイターが集まりアート・ファッションを通じた刺激的な発信をしている「rooms EXPERIENCE」のお話を伺い、もともと私自身がH.P.FRANCE様の取り扱っているアクセサリーのファンであったこともあり、その場でコラボレーションの打診をさせて頂きました。H.P.FRANCE様が発信するクリエイションと当社のテクノロジーが融合する事で、これまでにない新しい価値が生み出せるのではないか。そう考えたのです。
アパレル業界におけるデジタル化を顧客接点という側面で捉えると、ECでの購入はもちろん、高精度なリコメンドや高度な物流システムによる配送など、「利便」を追求した仕組みが浸透してきています。しかし今回、私たちはそういった時短や効率といった「利便」的な面ではなく、ブランドのファンの皆さんが、クリエイターの想いやをより深く知るきっかけとしてVRを活用することを提案させていただきました。
【コンセプト】
本コンテンツは、空に浮かぶ動物園Zoo nachの中で、空中に浮かぶ4つの島々をふわりふわりとツアーしながら、nachのアクセサリーたちと触れ合うことができるショートムービーです。コンテンツの企画・制作にあたっては、さまざまな創意工夫がありました。
映像/グラフィックグループ 戸本:今回はnachならではの柔らかさがある動物をモチーフに、「手作り」「ぬくもりのあるプロダクト」というnachの魅力をVRの世界にどう立ち上げるかという点がスタートでした。VRコンテンツは、その特性から「驚き」や「意外性」を求められる事が多いのですが、今回大事にしたかったことは、そういったギミック性よりも、コンテンツ体験を通じ何を感じていただくか、でした。その点をコアとしながら、ブランドがまとうイメージや実際にアクセサリーを手にして感じた印象をもとに、ストーリーに落とし込んでいきました。
水島:3D空間の特徴として、2Dに比べると360°全方位に向け情報量が拡張されることが挙げられます。空に浮かぶ島々というコンセプトにしたのは、バーチャルな360°空間全てを体験者の興味のままに移動して頂き、より深くnachの世界観に触れていただきたかったためです。
VR空間による立体的な「体験」の中に、ブランドが持つバックストーリーやクリエイションを乗せて発信するという新しい試みは、今後様々な場所で増えていくのではないかと思っています。
【展示を終えて】
戸本:今回、アクセサリーのデザインからVRコンテンツを構築するということで、当初はかなり困難になるのではと心配でしたが、結果的に多くの方に楽しんでいただき、ポジティブな評価をいただけたので、安心しました(笑)。
水島が申したように2Dのデザインが360°の3D空間になるということは、世界観が大きく広がるということです。360°の3Dコンテンツを企画・演出するにあたっては、映像編集的にコンテンツへアプローチするのではなく、今回のケースのように実在するプロダクトといった事象からコンテンツを発想するというスキルが、今後は重要になっていくと思います。
上下左右そして前後があるVRの世界においては、従来の映像のように一方通行的な感覚ではなく、自分が構築した架空の世界に入っていただき、その中で自由に楽しんでいただくというアプローチが、VR体験をさらに有意義なものにしてくのではないでしょうか。
水島:今回、三日間の展示で約1,000名のご来場者様にコンテンツを体験していただくことができました。VR体験は初めてという方も多く、テクノロジーとクリエイションの融合を体験できる「場」を設けられたことで、多くの方にnachの事を知っていただくことができました。
VRという技術・手法自体は手段のひとつでしかないと思っています。それは、H.P.FRANCE様が発信されている高度なクリエイションや、nachの魅力があってこそ成立するものであると改めて感じました。
今回の経験を踏まえ、物事の価値をテクノロジーを通じてどのように表現・発信していくか、今後も工夫を重ねていこうと思います。
今回の活動でご一緒させていただいたH.P.FRANCEのみなさま、nachのデザイナーのお二人、本当にありがとうございました。